丸山珈琲を知ったのは、今年4月に「星のや 軽井沢」へ行ったときのことだ。ハルニレテラスにオシャレなブックカフェがあり、そこのポスターでバリスタ日本一を連続で輩出している、とんでもないハイクオリティな店であることを知った。ジャパンバリスタチャンピオンシップ(JBC)で、3名のバリスタが2009年~12年まで4年連続優勝中である。
丸山珈琲と言えば、スペシャルティコーヒーで知られる。コーヒー豆を品種ではなく農園レベルまで追及したもので、ワインなら当たり前のことをコーヒーでやっているわけだ。直営店は少ないが、豆の輸入・販売でコーヒー通には知れ渡っている。ドリップやサイフォンではなく、紅茶と同じようにフレンチプレス(コーヒープレス)での抽出を推奨しているのも特徴だ。
1968年生まれの丸山健太郎社長は、買い付けのため、年間100日以上は海外だという。各国の品評会で1位を獲得した豆を、史上最高価格で落札することもめずらしくない。軽井沢の老舗の二代目が財力に物を言わせたのかと思ったら、安値で買い叩かれる途上国の産地に対し、真っ当な価格で応えたいというフェアトレードの精神で、神奈川出身の若者(軽井沢は夫人の実家)が20年かけてここまで育てたのだった。最初の10年は普通の喫茶店、その後の10年で豆の取引に目覚め、コーヒー通なら誰もが知る存在になった。
コーヒーの淹れ方を広めることにも力を入れ、10年3月から東京でセミナーを開始。横浜方面からも足を運びやすい尾山台にセミナールームを開設したのが11年12月。今年3月からはルーム内で豆と器具の常設販売を始め、10月1日にはメインストリートである商店街(ハッピーロード尾山台)にカフェ併設の尾山台店を設けた。
間口は狭いが奥には14席のテーブルがあり、JBC2012で優勝した井崎英典バリスタが所属し、豆を求める丸山珈琲ファンと、一度飲んでみたいという人々で賑わっている。店内の盛況ぶりに、立ち止まってメニューを眺める通行人が絶えない。雑誌でも大きく紹介され、いま休日の昼下がりに行くと、カフェは満席で順番待ちだ。近所に住んでいるのだから、そこまでして(携帯番号を書いて周辺で待つ)飲むのはどうかと思って今回はパスしたが、街をイメージした「尾山台オリジナルブレンド」もあるそうだ。テイクアウトも可能だ。
ハッピーロード尾山台と言えば、これまでは「オーボンヴュータン」で知られていたが、これからは「丸山珈琲」も代名詞になるかも知れない。奥沢の「D&DEPARTMENT」とも近く、足を伸ばしてみるのもいいだろう。
(2012年11月10日追記)
次の週末、尾山台店に入ることが出来た。東京新聞11月8日付朝刊によると、世界チャンピオンを目指している鈴木樹バリスタも尾山台店所属になったようだ。