書類で空欄を抹消する場合、斜線を引く。複数行あるときは「以下余白」と書くこともある。このときの斜線は「左上から右下」「右上から左下」のどちらがが正しいだろうか。
ネット上では両方の考え方が紹介されている。簿記の場合、余白線(赤い斜線)は「右上から左下」なので、簿記の知識がある人は当然この考え方である。「〆」という文字が「右上から左下」なのもその根拠になっている。
「左上から右下」で説得力があるのが、「右上から左下」だと数字の「1」と間違える可能性があるというもの。確かに幅の狭い欄に「/」と引くと、斜体の「1」に見えるかも知れない。ISOの基準で定められているという説もある。Yahoo!知恵袋で両方の意見を見てみよう。
- 「左上から右下」派
「正式な書類(公文書等)を作成する時、表に斜線を引く場合、左上から右下に引くの…」 - 「右上から左下」派
「余白の締め方について 書類等の余白を締める時に斜線を引きますがその際、『右上…」
帳簿は簿記のルールで「右上から左下」だが、一般の書類について知りたい。OKWaveでは金融機関に勤務している人が、次のように答えている。
文書内に表があって、そこが空欄や記入不要という場合に、記入する場所と区別するために斜線を引く…ということでしょうか?
そのことならば、どちらが「正しい」ということは存じませんが、「右上から左下に向かって」引くのが「一般的」だと思います。
(中略)
大きく表自体が空欄…というような場合には、線の途中で一回転して、ループを作る場合もあります。
理由は、右利きの人にとって「右上から左下」のほうが引きやすいからだとしている。実際の作業としては左下から右上に向かって引くことになると思うが、確かにフリーハンドでも定規を使っても、左下から右上が引きやすい。フリーハンドでループをつくる場合など、左下から右上でないとうまく書けない。金融機関勤務で簿記にも精通しているはずで、その上での客観的なジャッジだと思う。
ネット上にある官公庁の書類記入例でも両方がある。愛知県健康福祉部健康担当局医薬安全課が作成した麻薬譲受証の記入例が、「左上から右下」だ。これはこれで間違いではないだろう。
結論として、帳簿でないならどちらの方向でも構わないが、一般的には「右上から左下」(右利きの人が引く場合は「左下から右上」)が多いと思われる。
(2013年2月15日追記)
「nlog(n)」がこのアーティクルを元に、独自の考察をしている。斜線の目的は文章に追記がないことを示すためで、その文書で扱う重要な項目の位置によって、斜線の方向が異なると指摘している。帳簿は金額が右端にあるため、簿記では「右上から左下」になり、麻薬譲受証は品名が左端にあるため、「左上から右下」になるというものだ。
斜線が「左上から右下」か「右上から左下」かは,「重要な項目を潰すことが優先」として考えると,この2つを統一的に扱うことができるのである。つまり,「一般的にどちら」と考えるのは間違いであり,その表で最も「重要視されている項目はどれか」を見極めてどちらかを選択すべきなのである。一般的に,表というのは重要な項目は左か右のどちらかに来るようにできており,中央には来ないものなのである。中央に重要な項目が来るようなものは,欄自体が少ないのだ。
理路整然としており、非常に説得力がある。コメント欄でいただいた「文字が進行する方向に従う説」もなるほどと思ったが、こちらは一般論ではなく、書類ごとに違って当然という新しいアプローチだ。
1件のコメント
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横書きであれば、左上から右下に斜線を引くのが正解だと思います。
理由は「文字が進行する方向」に従っているからです。
横書きの場合、左上から文字を書き始め、右下で終わります。そのため、当該空欄に文字は入らないことを示すため、文字が進行する方向に従って「左上から右下」に向けて斜線を引くのだと思います。極端な話、右上から左下に斜線を引くと、文字を書き始める左上部分に文字を書くことが可能でしょ?
「右上から左下」に斜線を引く人が多いというのは、以前は縦書きが主流だったからだと思います。縦書きの場合は、文字は右上から左下に進行しますから、そのように斜線を引くのが正解で、その当時の書き方が横書きとなった現在でも引き継がれているだけだと思います。
説得力ある説明をありがとうございます。確かに右利きに根拠を求めるより、横書きに根拠を求めるほうが合理的ですね。なぜ、いままでこの意見がネットで見つからなかったのか、不思議です。