宿泊してみないとわからない「星のや 軽井沢」の利用ポイント


この記事は2012年9月に掲載されたものです。
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星野リゾートに関するマスコミの扱いを見て、そのフラッグシップである「星のや 軽井沢」に一度は泊まりたいと考えている方も多いだろう。だが、ガイドブックを読んだり、日帰りで星野エリアを訪れているだけではわからないことがいくつもある。ここでは、私が2012年4月に泊まって実感したポイントをまとめておく。

  1. 星野エリアの一施設だととらえる

    星野リゾートに関連するサイトは非常に多く、「星のや 軽井沢」を含む軽井沢の星野エリアだけでも複数のサイトが組み合わさって、集合知を提供するような構成になっている。このため、「星のや 軽井沢」施設サイトから入ってしまうと、エリア全体の配置がわかりにくく、ナビゲーションもよくない。あくまで星野エリアの一施設ととらえ、星野エリア公式サイトから見ていくほうがわかりやすい。

    星野エリアは広大で、エリアマップから「星のや 軽井沢」がはみ出ている。マップの約100メートル北東に宿泊棟(「谷の集落」と呼ぶ)、約100メートル南にチェックインのためのレセプション棟がある。車で来た宿泊者はここに駐車し、宿の専用車(黒塗りのキューブ)で「谷の集落」まで送ってもらうわけだが、JR軽井沢駅からシャトルバスで来る場合も同じなので、なぜ直接「谷の集落」に行ってはいけないのか、初めてだと戸惑う。手続きに加え、客室まで送られる車中の説明がガイダンスを兼ねているのだ。チェックアウトは「谷の集落」内「集いの館」にあるフロントで行なう。

    Googleマップ上では、レセプション棟が「星のや 軽井沢」となっており、「谷の集落」はなにも書かれていない。施設サイトの「交通案内」では、Googleマップに追記をしているが、こちらは逆にハルニレテラスがわかりにくい。一度行けば位置関係はすぐわかるが、初めてだとこの辺を自分でイメージする必要がある。

    軽井沢駅からの無料シャトルバスは2通り出ている。誰でも乗れる星野エリア行きと、宿泊者専用(黒塗り)だ。星野エリア行きはハルニレテラスを過ぎた付近で停まるが、エリア内なので全く問題ない。新幹線ならこちらを利用し、ハルニレテラスで時間を潰してからレセプションに行くのもよい。

  2. とにかくアクティビティに参加する

    リピーターなら別の楽しみ方もあると思うが、初めてなら盛りだくさんなアクティビティにぜひ参加したい。早朝から夜間まで多彩なプログラムが組まれ、追加料金の有無も様々だが、まずはアクティビティに参加し、2か所ある温泉施設(メディテイションバス、トンボの湯)に浸ることが、基本的な過ごし方である。

    施設サイトには、有料を中心にアクティビティの一部しか書かれていない。これ以外にも、季節ごとに予約不要の無料プログラムが多数あり、私は客室に置かれている案内で初めて知った。連泊しないと楽しめないボリュームで、初めてなら事前の情報収集と計画が大切だと思う。出来れば事前にスタッフに相談したい。サイトに正確な情報がないため、これがベストだと思う。「お金をかけずにアクティビティで一日過ごせますか」と質問すれば、いろいろ提案してくれるだろう。もしかしたら、あなただけの特別プログラムを用意してくれるかも知れない。

    このとき、星のや総合予約(050-3786-0066)に電話してはいけない。ここは星のや全体の予約窓口で、オペレーターは各施設のアクティビティ詳細まで把握していない。私は誤った情報を教えられた。相談するなら、宿のフロント(0267-45-6000)にかけ、実際にアクティビティを運営しているスタッフと会話すべきである。

    私は、有料プログラムでは「ムササビのウォッチング」と「季節の花巡り」に参加した。オフシーズンだったため、いずれも私たち夫婦の貸切状態で、料金が格安に感じられた。前者は星野リゾートの関連会社「ピッキオ」が主催するもので、星野リゾートの前身である星野旅館と日本野鳥の会を設立した中西悟堂の関係を読むと、エコツアーをぜひ取り入れたくなる。

  3. 食事はエリア全体で組み合わせる

    「集いの館」にある日本料理「嘉助」は宿泊者専用だが、宿泊費に含まれていない。ほかで自由に食事出来るのが、「星のや 軽井沢」の大きな特徴だ。これは有名レストランも多い軽井沢全体を楽しむための配慮であり、店をうまく組み合わせながら利用したい。

    率直に言って、「嘉助」の夕食はサービスに疑問を感じた。このクラスの懐石料理なのに、スタッフがテーブル担当制になっておらず、注文ミスもあった。スタッフがこちらの好みを無視して、自分のチョイスを無理強いする場面もあった。サービスで知られる星野リゾートだけに、これは非常に残念だった。

    星野エリア内なら、「村民食堂」が居酒屋価格で楽しめるし、ハルニレテラスにもレストランが5軒ある。夜間のエリア内移動は、遊歩道が整備されているため危険はないが、照明は最低限しかないため、客室備え付けの懐中電灯を使うとよい。ホテルブレストンコートへは車で送迎してくれる。

    一方、「嘉助」の朝食は素晴らしかった。高原野菜中心のメニューで、盛り付けや食べ方も旅館の朝食を超越した新しい提案に感じられ、感動した。この朝食は正午まで利用出来るので、遅めのブランチにしてもいい。例えば、朝のアクティビティに参加してから、ゆっくりブランチを楽しむことも出来る。

    「星のや 軽井沢」では、「嘉助」の朝食(税サ込3,520円)よりルームサービスの朝食(税サ込3,000円)が安い。このため、1日目は客室で洋食のルームサービス、2日目は「嘉助」の朝食がオススメの組み合わせだ。もちろん、ハルニレテラスのカフェやホテルブレストンコートの「軽井沢ブレックファスト」も悪くない。

    「谷の集落」への入口

    よく知られる「谷の集落」風景1 | 2
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    1 「谷の集落」への入口
    2 よく知られる「谷の集落」風景

    日本料理「嘉助」はテーブル担当制ではなかった

    「集いの館」前に広がる棚田の風景3 日本料理「嘉助」はテーブル担当制ではなかった
    4 「集いの館」前に広がる棚田の風景

  4. サービスに過剰な期待を抱かない

    星野リゾートと言えば、どうしてもサービスに期待してしまうと思う。私の場合も、中沢康彦著+日経トップリーダー編『星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?』(日経BP社、2009年)を読んで興味を持ったクチなので、そのフラッグシップである「星のや 軽井沢」に過剰な期待を抱いてしまった。

    星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?
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    実際に訪れてみると、星野リゾートの新人研修の場も兼ねているようで、スタッフの平均年齢がとても若く、中堅・ベテランのスタッフをほとんど見かけなかった。もちろん好感を抱いたスタッフもいたが、中には星野リゾートで働くプライドが強すぎ、ホスピタリティの本質を見失っているのでは、と思える人もいた。前述の「嘉助」での不手際も、こうした気持ちから生まれるのではないか。サービス業に携わっている方は、この辺の感覚が気になると思う。優秀な人は新施設のオープニングスタッフとして送り込まれるわけで、必ずしも「星のや 軽井沢」が星野リゾートの頂点ではないということだ。

  5. 指名の出来ない高額マッサージは危険

    温泉といえばマッサージだが、これも注意が必要だ。メディテイションバスにある「星のや スパ」で、80分21,000円という指圧・鍼・あんまのメニューがあり、心を奪われそうな説明文が載っているが、マッサージの相場(10分1,000円)を考えると驚愕のプライスだ。私はお試しとして、客室で施術してもらう40分6,000円のコースを頼んだ。

    実際に施術してくれたのは若い女性スタッフで、香を焚いたり、環境音楽を流すといった付加価値はあったものの、肝心のマッサージはぎこちなかった。お試しコースを担当する新人だったのかも知れないが、マッサージは相性があるだけに、どんな技術を持ったスタッフかわからないと、高額なコースは怖くて頼めない。

    「星のや スパ」では専用のメールアドレスを公開しているので(全メニュー一覧PDFの末尾に記載)、温泉にマッサージが不可欠と考える方は、事前にじっくり相談すべきだろう。リゾートだからといって奮発するのは、冒険すぎると思う。

  6. 食後のアルコールは持ち込みを

    夕食を終えてもう少し飲みたいと思っても、「星のや 軽井沢」にはバーがない。これは意外だった。客室にもミニバーはなく、冷蔵庫に星野リゾートの関連会社「ヤッホーブルーイング」の「よなよなエール」があるだけ。あとは24時間営業のルームサービスを使えということらしいが、ボトル単位なので気軽に頼めない。もちろん自動販売機はない。

    やむなく、私は最も近いコンビニへ行った。レセプション棟から南(中軽井沢駅方面)へ約250メートル行ったところに、セブン-イレブンがある。「谷の集落」からだと約1,200メートル、徒歩15分といったところだ。歩道のある国道146号線沿いに進めばよいので危険はないが、夕食後に歩くのは面倒なため、よなよなエール以外を所望される方は、事前に散策がてら購入しておくとよい。最も近いATMも、このコンビニになる。