1968年に秋田書店から発行された大伴昌司著『怪獣ウルトラ図鑑』が、「復刊ドットコム」から3月17日に復刊された。私の世代の男子なら誰もが持っていた「写真で見る世界シリーズ」の一冊で、『ぼくら』『週刊少年マガジン』などの記事をまとめたものだ。前作の大伴昌司著『怪獣図鑑』(秋田書店、1967年)は、皇太子殿下が初めて小遣いをためて買った本として知られている。
この本は23版以降から古書価格が全く違う。欠番となっている「ウルトラセブン」第12話「遊星より愛をこめて」に登場するスペル星人のページが、ガッツ星人に差し替えられているからだ。今回の復刊でも、当初[完全復刻版]と謳われていたが、スペル星人を載せるのは無理だろうという読者からの指摘で、[復刻版]にトーンダウンした経緯がある。
復刻版とサブタイトルを変更いたしました。 RT @syouyou555「怪獣ウルトラ図鑑」。伝説の本ですから買ってみようと思っています。ただ、スペル星人の件があって完全復刻は無理なのだから、「完全復刻版」と謳うのはどうかと思うのです。 bit.ly/tpBM0p
— 復刊ドットコム編集部さん (@fukkan_editors) 12月 26, 2011
第12話の欠番問題は、この『怪獣ウルトラ図鑑』の記述も大きく影響しているので、これが完全復刻出来ないのは当然だろう。「復刊ドットコム」上でも、初版と同じでないと復刻の意味がないという主張が目立つが、スペル星人に対する被爆者擁護団体の抗議は、作品本編への直接的なものではなく、周辺の出版物の表記に対するものだった*1 。この経緯を考慮し、作品本編の解禁を望むのなら、『怪獣ウルトラ図鑑』を慎重に扱うのはやむを得ないことではないだろうか。
アンヌ隊員役のひし美ゆり子(旧名・菱見百合子)氏の個人ブログ「あれから40年…アンヌのひとりごと」によれば、今回の復刊のきっかけとなったのは、昨年の『万華鏡の女―女優ひし美ゆり子』(筑摩書房)出版記念パーディーで、「復刊ドットコム」編集長の森遊机氏と、秋田書店の高橋圭太氏が出会ったこと。「復刊ドットコム」は紙での復刊だが、秋田書店は5月ごろ電子書籍化するらしい。
第12話の欠番問題については、昨年8月13日に開催された川崎市民ミュージアム「実相寺昭雄展」のトークショーで、実相寺組のカメラマンである中堀正夫氏から興味深い発言があったことが報告されている。
驚いたのはウルトラセブン第12話「遊星より愛をこめて」の話になったとき、中堀氏から円谷プロはすでにこの作品のデジタルリマスターを作っているという噂があり、時が来ればいつでも公開できるらしいということが語られたこと。実相寺監督作品というだけでなく、ひし美ゆり子と桜井浩子という円谷特撮2大ヒロインの共演作でもあるので、円谷プロにはそろそろ本当にお願いしたい。
昨年9月に発売された『ウルトラ怪獣DVDコレクション(6)』(講談社)にスペル星人の写真が掲載されたり、YouTubeで昨年8月27日に掲載された第12話が本日現在も視聴可能になっていることなどから、本件については円谷プロの対応が緩和しているように見受けられる。デジタルリマスターの第12話を見られる日が来ることを願って止まない。
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(2014年7月6日追記)
「ウルトラセブン」ブルーレイBOXの発売が発表されたが、第12話「遊星より愛をこめて」は欠番のままである。
- 「『1/49計画』サポートページ」が詳しい。 [↩]