三菱地所、三菱地所リアルエステートサービス、藤和不動産の住宅事業が2011年1月に統合され、三菱地所レジデンスが設立されたのに伴い、マンションブランドが「パークハウス」から「ザ・パークハウス」に変わった。
それまでのデベロッパー(三菱地所)と販売会社(三菱地所リアルエステートサービス)が分離した形から一本化されたのはよいと思うが、なぜブランド名を変えてしまったのだろう。「Theをつけたくなる毎日。」というキャッチコピーの全面広告も打ったが、そもそも三菱地所のマンションブランドは「パークハウス」しかなく、競合他社が価格別にブランド名を分けていたのに対し、長年これ一本で通してきた。
03年に三菱地所が出した「私の良さってなんだろう」というパンフレットでは、次のように説明していた。
名前は、
たったひとつあればいい。
パークハウス「パークハウス」という名前は、昭和44年(1969年)完成の赤坂パークハウスから始まりました。以来、三菱地所のマンションはこの名前です。会社によっては、マンションに価格別のグレードをつけてブランド名を変えるところもあるようです。でも、私たちの場合、30年以上ずっとパークハウス。ワンブランドです。(どちらが正しい、ということではないのですけれど)
私たちは、一つ一つの物件に込める志を変えたくありません。仕様や素材は変わったとしても、3000万円の物件も、3億円の物件も、基本構造や設計のクオリティに区別はないのです。
さて、ありふれたような「ハウス」ですが、いまでも赤坂パークハウスをみると、「家」という概念をマンションに導入した先輩たちの声が、私たちに呼びかけているような気がしてしかたないのです。「後輩たちよ、本物をつくろう。一過性でなくずっと住み継がれる、安全な暮らしができる、そんなしっかりした
家 をつくろうじゃないか」永く住んでこそわかる価値があるんだな、住む人にそう感じていただくことが一番うれしい。そんな思いが詰まった、平凡で、すばらしい名前、パークハウス。ちまたのブランド本には載らないかもしれないけれど、私たちはとても気に入っています。
素晴らしい文章だと思う。つくり手の思いが込められていて、打ちながら泣きそうになった。この文章を読んでパークハウスに決めた人も、きっと多いはずだ。だからこそ、決してブランド名は変えるべきではなかったと思う。形の上では、藤和不動産が三菱地所と三菱地所リアルエステートサービスの事業を継承して社名変更したわけだが、経営危機に陥った藤和不動産を三菱地所が救済したので、ブランド名を新しくする理由はなにもない。
逆に、新会社になってもブランド名を変えなければ、それこそが購入検討者に強い意思の表われとして伝わったと思う。例えば、
社名は変わりましたが、
マンションの名前は変わりません。
パークハウス
としたほうが、購入検討者の心をつかまえることが出来たのではないか。安易に「The」を付けるとは、それこそ「ちまたのブランド本」に影響されすぎではないだろうか。せっかくのチャンスだったのに、もったいないことをしたと思う。