クリスマスシーズンのスーパーに、シャンメリーが並んでいる。シャンパンを模した炭酸飲料で、子供がいるクリスマスパーティには欠かせないものだろう。
定番のデザインに加え、アニメのキャラクターを使ったものもあり、結構種類があると思っていたら、メーカーが複数あるではないか。シャンメリーって商標登録ではなく、一般名称だったっけ。経緯を調べてみたら、そこには30年に及ぶ壮大なドラマがあった。
1947年 | ソフトシャンパンの名称で東京の飲料会社が製造開始、全国に広まる。歓楽街でのシャンパン代用品だった。 |
1965年 | 日本が原産地表示の防止に関するマドリッド協定を批准。 |
1966年 | 富山のトンボ飲料がホームパーティへの売り込みを大手スーパーに提案、家庭のクリスマス用に広まる。 在日フランス大使館が政府に「シャンパン」使用禁止の申し入れ。「シャンパン」はシャンパーニュ地方の発泡ワインしか使えないため。 |
1967年 | 清涼飲料業界が「シャンパン」を使えるよう陳情。 |
1968年 | 三ツ矢シャンパンサイダーが三ツ矢サイダーに改称。 |
1972年 | 全国ソフトシャンパン協同組合設立。シャンパンの「シャン」+メリークリスマスの「メリー」でシャンメリーを考案、商標登録出願。 |
1973年 | ソフトシャンパンをシャンメリーに改称。 |
1974年 | 全国ソフトシャンパン協同組合が全国シャンメリー協同組合に改称。 |
1976年 | シャンメリーの商標出願が登録認可。 |
1977年 | 「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」(分野調整法)制定。 |
(参考) トンボ飲料サイト 全国清涼飲料協同組合連合会・全国清涼飲料工業組合連合会サイト 清涼飲料探訪(財団法人日本炭酸飲料検査協会) アサヒ飲料サイト「Asahi History Books」 |
協同組合の商標登録なので、組合員なら使えるということだろう。
マドリッド協定の効力発効で「シャンパン」という表記が使えなくなり、協同組合を設立してシャンメリーに改称するまで、激動の業界史である。Wikipediaには「粗悪品も横行したことから、市場の適正化などを目指して全国ソフトシャンパン協会(全国シャンメリー協同組合の前身)が結成された」とあるが、この年表を見ると名称変更に対応するため結成されたのが正しいのではないだろうか。今年(2012年)は全国シャンメリー協同組合設立40周年になる。誰かドラマ化すればいいのに。ちなみに、30周年のときは「どきどき・わくわく・シャンメリー」という曲がつくられている。
1977年の分野調整法は具体的な商品まで定めているわけではないが、全国清涼飲料協同組合連合会、全国清涼飲料工業組合連合会の主張により、ラムネ、シャンパン風密栓炭酸飲料(シャンメリー)、びん詰コーヒー飲料、びん詰クリームソーダ、ポリエチレン詰清涼飲料(通称:チューチュー)、焼酎割り用飲料が中小企業の生産分野品種となっている。他の業界で分野調整法が効いているのは豆腐くらいで、清涼飲料業界はそれだけ中小企業が強いということか。
なお、シャンメリーには下記の定義がある。
- 発音栓(開けたときにポン、と音がする)であること
- 定型の「Chanmery」という刻印のあるビンに入った炭酸飲料であること