デジタルカメラが一般的になり、写真のアウトプットも1枚ごとのプリント以外にフォトアルバムが普及してきた。プリントをアルバムに貼ることを思えば、イベントやテーマごとに最初からコメントを入れてフォトアルバムにしたほうがスマートだ。
店頭・ネットを合わせて40社程度が扱っていると思われるが、オンラインフォトアルバム比較サイトを検索すると、キヤノン「フォトブック」が全く対象になっていないのに気づいた。これはキヤノン製品ユーザの会員サイト「CANON iMAGE GATEWAY」が提供しているもので、会員登録にはカメラまたはプリンタの購入が必要だ。カメラはハードルが高いだろうが、プリンタまで含めるとユーザは相当数いるはずで、会員向けサイトだからという理由で比較からはずすのは片手落ちだと思う。逆にきちんと比較して、会員になればこのサービスが使えることを紹介するのが、比較サイトの務めだろう。
会員にならなくても利用出来る書籍タイプの「PHOTOPRESSO」は、2010年に開始したサービスを11年から一般にも公開したため、比較対象にするサイトも出てきたが、アルバムタイプの「フォトブック」は会員限定のため、相変わらず扱われていない。検索で上位に表示される比較サイトを確認したが、ほとんどのリンク先がアフィリエイトになっており、アフィリエイト対象外のサイトを積極的に扱わない姿勢が明らかだ。
実は、比較サイトの多くが高い評価をしているアスカネット「マイブック」は、02年~06年まで「CANON iMAGE GATEWAY」から注文出来た。それにキヤノン独自の「フォトブック」が04年から加わり、現在に至っている。世界初のフォトブックサービスである「マイブック」を、いち早く「CANON iMAGE GATEWAY」に加えたキヤノンの先見性を忘れてはならない。
私は05年からキヤノン「フォトブック」を注文しているが、今回他社のサービスと見比べてみて、さすがキヤノンと再認識した点があった。
- 04年のサービス開始以来、体裁が全く変わっていない。途中でデザインテンプレートの追加提供はあったが、それ以外の判型・印刷・造本などはなにも変わっていない。これは開始時のフォーマットがいかに優れていたかの証明であると同時に、同じ体裁でアルバムを揃えていきたいユーザのニーズに応えている。絵本と同等のハードカバーで、ページが厚くならない両面印刷の無線綴じは、所有欲・コレクション欲をくすぐる完成度だ。
- 編集は無償でダウンロード出来る「Photobook Editor」を使って行なうが、このデザインテンプレートが素晴らしい。通常、こうしたソフトで編集するサービスだと、「思いどおりのアルバムがつくれる」ことをウリにしているが、ユーザの自由度が高すぎると、まとまりのない素人臭のするデザインになってしまうことが多い。キヤノンの場合は、デザイナーがガチガチに固めたテンプレートが提供され、写真やキャプションはそれに従うことになる。最初は窮屈に思うが、結果的にこれが完成度の高いデザインとなり、誰が編集しても一定のクオリティが保たれる。
- 長期保存を目的に、特殊液体インキで網点印刷されている。印刷の粒状感がやや目立つが、これが変退色への強さとなっている。発色のよさを重視する人には物足りないと思うが、アルバムに求められる機能を追及した結果だと思う。
これらはすべて逆の好みがあるわけで、デザインの自由度を追及したり、発色のよさを重視するなら、別のサービスを選べばよい。だが、選択肢としてキヤノン「フォトブック」自体を排除するのはおかしいと思うので、ここで指摘しておきたい。
フォトアルバム全体の料金が高いという意見も散見するが、銀塩写真のころはフィルム代と現像代がかかっていたわけで、撮り放題のデジタル写真から厳選したものをアルバムの形で残す料金として、私は決して高くないと思う。みんな、銀塩写真のころを忘れてしまったのだろうか。
(2013年7月6日追記)
キヤノン「フォトブック」が13年9月末注文分をもって受付終了することが発表された。ショックである。