医療費控除が大きいと、確定申告で住民税の普通徴収を選んでも特別徴収になってしまう


この記事は2012年6月に掲載されたものです。
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6月の給与明細と共に配布されるのが、住民税の決定通知書。給与天引される特別徴収税額を知らせるものだ。給与所得以外の所得区分や金額も明記されるため、そのままでは確定申告した内容が勤務先に知られる可能性がある。このため、確定申告する年は「住民税の徴収方法の選択欄」を「自分で納付」にする。これで給与・公的年金等にかかる所得以外は普通徴収として自分で納付することになり、特別徴収の決定通知書には記載されなくなる。

確定申告書B(第二表)「住民税・事業税に関する事項」(部分)

確定申告書B(第二表)「住民税・事業税に関する事項」(部分)


ここまでは常識だが、今年配布された決定通知書に、記載されないはずの給与所得以外が書かれていて、目が点になった。雑所得で大した額ではないが、勤務先で指摘されたら面倒なので「自分で納付」にしたのに、なぜだ……。役所の入力ミスを疑ったが、ネットで検索してみると、Yahoo!知恵袋にこんな質問があった。

【住民税】普通徴収を選択したのに特別徴収されました

質問者は給与所得とは別に不動産所得があり、確定申告で普通徴収(自分で納付)を選んだのに、特別徴収(給与天引)になってしまったというもの。このままでは、「会社に不動産投資をしていることがわかってしまう可能性があります」と嘆いている。これに対し、回答者が「不動産所得が赤字でないのであれば、区役所が対応を間違っています」と書いたところ、実は赤字で正しい対応だったことがわかった。住民税の場合、赤字でも還付という概念がないため、特別徴収分と一緒に計算して住民税を減額するしかないのだ。

これを読んで、再度私のケースを考えてみたところ、医療費控除が原因だと気づいた。昨年は家人のインプラント治療で高額な医療費が発生し、それを私の分と合わせて確定申告したため、課税所得金額が大きく下がっている。このため住民税も下がり、特別徴収と普通徴収を分けて計算することが出来なくなったようだ。

これは確定申告の盲点ではないか。通常、給与所得・退職所得以外の所得合計が20万円以下の給与所得者は確定申告をしなくてもよいが、医療費などの還付申告をする場合は、20万円以下の所得もすべて記載しないといけない。そうなると、還付額が大きくて住民税が下がる場合、普通徴収(自分で納付)を選んでも意味がないことになる。Yahoo!知恵袋に質問した人も、不動産所得の赤字を損益通算したかっただけなのに、それで不動産所得の存在が勤務先に知られる危険がある。

Yahoo!知恵袋の回答者は、勤務先に残る書類には内訳が記載されていないので、そのまま目立たないようにやりすごすべきとアドバイスしている。確かにそれしかないだろう。還付申告しないのはあまりにもったいないし、確定申告するからには所得隠しは絶対出来ないのだから。これは諸刃の剣ではないだろうか。