「謎の円盤UFO」はロゴとタイトルのみがMicrogrammaで、クレジットはEurostile


この記事は2014年1月に掲載されたものです。
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「謎の円盤UFO」で使用されているフォントについて考察したい。本日現在、Wikipediaではこう書かれている。

UFOのタイトルロゴを初め、オープニングおよびエンディング・クレジット、更には作品中でのスカイダイバーやシャドーモービルの機体に記されたSKYDIVERやSHADO 1などの文字に使われていたのは1950年代に考案された’Microgramma’というサンセリフのローマ字書体である。ただし、オープニングではこの字体は使われていない。

Microgrammaは、イタリアのアルド・ノバレーゼ(Aldo Novarese)氏が1952年にデザインしたもので、その後Microgrammaを元に62年までかけ、書体を充実させたEurostileを完成させている。両フォントファミリーは酷似しており、書体によっては判別がつかないほどだ。ブログ「oba’s blog」では、下記のように指摘している。

Wikiでは番組使用フォントはMicrogrammaだとありますが、Euroも作者は同じAldo Novareseが1962年に発表したので微妙なところ。

試しに「fonts.com」のお試し機能を使って、Microgramma Bold ExtendedEurostile Extended Blackで「UFO」を組んでみた。強いて言うなら、Eurostileのほうが全体的に丸みを帯びており、「O」のアールの角度で差異を感じる。このため、タイトルロゴはMicrogrammaと言っていいと思う。両フォントとも複数のタイプファウンドリー(書体メーカー)から発売されているが、アルド・ノバレーゼ氏がフォントを提供したイタリアのネッビオーロ社(Nebiolo)のものを使用した。

「謎の円盤UFO」タイトルロゴ比較

「謎の円盤UFO」では、各エピソードのタイトルも同じ書体で組まれている。そうなると、これもMicrogrammaということになる。

第1話タイトル「IDENTIFIED」

第1話「宇宙人捕虜第一号」タイトル「IDENTIFIED」


オープニングとエンディングのクレジットは明らかに横幅が狭く、Extendedではない。WikipediaではこれもMicrogrammaだとしているが、MicrogrammaにExtended以外の書体はあるのだろうか。Microgrammaを扱うタイプファウンドリーは、前述のネッビオーロ社、ドイツのライノタイプ社(Linotype)とURW++社だが、いずれもネット上ではExtendedしか提供していない。最大手であるライノタイプフォント検索で探しても、Extendedの4書体しかない。そうなると、これはEurostileということになり、クレジットにも使っているというWikipediaの記述は間違いではないだろうか。ロゴとタイトルのみがMicrogrammaで、クレジットはEurostileということになる。

「謎の円盤UFO」オープニングクレジット

「謎の円盤UFO」オープニングクレジット(第1話「宇宙人捕虜第一号」より)

「謎の円盤UFO」エンディングクレジット

「謎の円盤UFO」エンディングクレジット


Eurostileファミリーだと、太字はEurostile BlackまたはEurostile Bold Extended #2、細字はEurostile Regularで組めば酷似している。

Eurostile Black/Regularによるオープニングクレジット

Eurostile Black/Regularによるオープニングクレジット(「fonts.com」のお試し機能使用)


オープニングシークエンスに挿入される「SHADO」などの文字は、Wikipediaに書かれているとおり全く違うフォントである。

「謎の円盤UFO」オープニングシークエンス

「謎の円盤UFO」オープニングシークエンスに挿入される「SHADO」


Microgramma、Eurostileともオリジナルは有料フォントで、フリーフォントではない。フリーでダウンロード出来るのは、似た名前の代替書体である(代替書体が全く同じ名前の場合もある)。私はMicrogramma代替書体のMicrogrammaDBolExtMicrogrammaDMedExtを使って楽しんでいる。同じものが、イタリアのファンクラブ「ISOSHADO」(Italian Section Of SHADO)トップページからもダウンロード出来る。

ちなみに、有料フォントのCD-ROMを非常に安価に収録した本がある。インプレスジャパンの『TrueTypeフォントパーフェクトコレクション』で、フォント名を変更したりしているが、有料フォント150万円相当分が約3,000円で入手出来る。例えば、EurostileはSquare 721の名前で収録されている。

改訂6版 TrueTypeフォントパーフェクトコレクション (デジタルBOOK)
Font by Bitstream Inc. 深沢 英次
インプレスジャパン
売り上げランキング: 11,259

なぜこのような芸当が出来たのかは、下記が詳しい。

びびび新書「『TrueTypeフォントパーフェクトコレクション』がここまで安い理由」

収録フォントの種類と活用方法については、下記が詳しい。

WEBCRE8.jp「これ1本で様々なシーンに対応出来る欧文フォント集『改訂6版 TrueTypeフォント パーフェクトコレクション』の収録フォント・利用条件解説」

「謎の円盤UFO」関連フォントと言えば、「Anderson UFO」という絵文字もある。メカニックのイラストをキーに割り付けて呼び出すもの。使う機会はほとんどないが、世の中にはこういうものもある。

Anderson UFO

フォント「Anderson UFO」(「Fonts2u.com」より)


(2020年12月6日追記)

Wikipediaの「オープニングおよびエンディング・クレジットはMicrogrammaである」という部分を、「オープニングおよびエンディングのクレジットはEurostileである」に修正した。

(2020年12月8日追記)

Wikipediaに、「オープニングシークエンスに挿入される『UFO』『SHADO』『1980』はギル・サンで、使用されているタイプライターはIBM Selectric typewriterである」を追記した。Gill Sans Bold Condensedが使用されている。下記のツイートが詳しい。