私がいちばん好きなサラダは、シーザーサラダだ。メニューが「シーザースサラダ」「シーザーズサラダ」になっている店もあるが、これはシーザーサラダでいいんじゃないかと思う。
シーザーサラダのレシピは1924年7月4日に出来た。こんなに由来が明確なのは、アメリカ独立記念日のパーティーが開かれていたメキシコのホテル「シーザーズパレス」で、料理が足りなくなったオーナーシェフのシーザー・カルディーニ氏が、有り合わせの食材でつくったものだから。当時のアメリカは禁酒法時代で、ハリウッドの芸能人たちが国境を越えてメキシコまで飲みに行っており、彼らがレシピを全米に広めた。⇒Wikipedia「シーザーサラダ」
シーザーサラダと言えば、ロメインレタス。と言うより、普通のレタスを使っているものはシーザーサラダと呼べず、「シーザーサラダ風」ではないかと思う。ロメインレタスはシーザーサラダドレッシングに本当に合う。一度ロメインレタスの味を知ってしまうと、高くてもそれだけの価値があると思う。
昔はロメインレタス自体がめずらしく、私がロメインレタスを使った本格的なシーザーサラダを初めて食べたのは、1998年のことだ。場所は東京・青山にあったカリフォルニアダイニングレストラン「LUNCHAN Bar&GRILL」(ランチャン バー&グリル)。一般には「キリンランチャン」と呼ばれていた。外国人の方にランチに誘われ、「これがオススメ」と言われたのが「ロメインシーザーサラダ」だった。
外国人が絶賛するシーザーサラダとはどんなものかと思ったら、シンプルにロメインレタスとドレッシング、それにクルトンだけを使ったサラダだった。ホールスタッフが大きなペッパーミルで挽いてくれる黒コショウも絶妙だった。「シーザーサラダ友の会」に載っている「シーザーサラダ真のレシピ」と同じである。
それまでサラダと言ったら、生野菜の盛り合わせをイメージしていた私にとって、素材の特徴を最大限に引き出したシーザーサラダは料理の概念を根底から覆すもので、たちまち魅了された。それ以来、シーザーサラダがあれば注文して食べ比べているが、「キリンランチャン」を超えるものには出会っていない。家人もランチに連れていったことがあるが、「キリンランチャン」のシーザーサラダが忘れられないと言っている。
「キリンランチャン」は、ロイヤルホストを運営する福岡市のロイヤルの関連会社であるアールアンドケーフードサービスとキリンビールの合弁事業で、89年に福岡・天神でオープン、92年に東京進出した。福岡では「KIRIN SOW-SOW」(キリンソウソウ)に名称変更して続いているが、東京は2004年に惜しまれながら閉店した。こどもの城横にあるアライブ美竹の1階で、現在は寺田倉庫関連会社のティー・ワイ・エクスプレスが運営する「beacon」(ビーコン)というグリルレストランが入っている。
福岡に行ったら、「KIRIN SOW-SOW」でシーザーサラダとハートランド樽生ビールを頼んでみたい。