実家に母親しかいない場合の相続登記と遺産分割協議書テンプレート


この記事は2011年11月に掲載されたものです。
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実家の父が昨年亡くなり、不動産の相続登記をした。相続登記をしなくても罰則はないが、火災保険の契約変更をするとき、相続人がどうなっているかを損害保険会社は確認するので、結果的に相続登記が必要になる。特に満期返戻金を伴うものは遺産になるので、損害保険会社も厳格になる。

法定相続分は母が2分の1、子2人が4分の1ずつで、それぞれ固定資産税を支払わないといけない。火災保険の被保険者になる必要もある。実家は両親だけが住んでいたので、土地と建物はすべて母のものでよいと思った。資産家だと次に母が亡くなったときの相続(二次相続)を考え、相続税額が最も安くなるシミュレーションをするようだが、うちは無縁である。

母がすべてを相続するには、相続人全員による遺産分割協議書を作成する必要がある。住宅ローンの抹消登記を経験していたので、土地と建物の記載方法は同じだ。これなら相続登記も自分で出来るのではないかと思ったが、最新の登記簿謄本(全部事項証明書)を取得するところから始めるなど、実家を管轄する法務局に最低3回は足を運ばないといけないことを考え、地元の司法書士へ依頼した。

相続登記では、ほかに相続人(認知した子)がいないかが問われる。このため、父の戸籍謄本を12歳くらいまで遡って取得する必要がある。現在の除籍された戸籍謄本、結婚前の従前戸籍、それ以外で本籍地を変えた場合はその分も必要だ。同じ戸籍でも、様式変更があった場合は改製原戸籍謄本も取らないといけない。戸籍がある役所はいま住んでいる地域とは限らないから、遠方の場合は郵送で申請することになる。司法書士が代行する場合は委任状が必要だ。母のほうは隠し子がいても相続権はないので、遡って調べる必要はない。

両親の結婚後の本籍は東京で、実家がある土地には移していない。このため、東京在住の私が戸籍謄本と改製原戸籍謄本を取得して、司法書士に送った。除籍は実家の役所から戸籍のある役所に除籍届が郵送されてから記載されるので、ムダ足にならないよう、役所に電話して除籍されたかどうかを確認した。個人情報なので電話では教えてくれないかと思ったが、すんなり教えてくれた。改製原戸籍謄本の有無がわからなくても、窓口で「相続登記に必要な戸籍一式」と言えば揃えてくれる。

父の結婚前の従前戸籍は、結婚後の戸籍謄本に記載されている情報を元に、司法書士に代理請求してもらう。この委任状は母から出す。これも年代的に戸籍謄本と改製原戸籍謄本があるはずだ。

こうした手続きで除籍謄本という用語もよく出てくるが、除籍謄本とはその戸籍に記載されている全員が死亡しているものを言う。両親の戸籍は母が健在なので、除籍謄本ではなく父が除籍された戸籍謄本になる。また、戸籍筆頭者は戸籍のキーとなるので、死亡しても戸籍筆頭者のままだ。住民票の世帯主が繰り上がることはない。

遺産分割協議書は司法書士が文面を作成し、母と子2人用に3通用意した。郵送で署名・捺印を集める方法もあったが、特に急ぐ理由もないので、四十九日法要で全員が実家に集まったときに面前で行なうことにした。印鑑証明書も互いに渡すことにした。

こうした揃えた相続登記に必要な書類は次のとおり。

  • 父の結婚前の戸籍謄本と改製原戸籍謄本
  • 父の結婚後の戸籍謄本(除籍されたもの)と改製原戸籍謄本
  • 父の住民票除票(本籍記載のもの)
  • 子2人の戸籍抄本
  • 遺産分割協議書(母と子2人の署名・実印)
  • 母と子2人の印鑑証明書
  • 母の住民票抄本(本籍記載のもの)
  • 固定資産評価証明書
  • 司法書士への委任状(母の認印)

これに司法書士が登記申請書を作成して相続登記した。母の戸籍も必要だが、これは父の結婚後の戸籍謄本が兼ねている。今回は子2人は相続しないので、住民票抄本は不要。遺産分割協議書と印鑑証明書は1セットでいいので母の分を使用し、原本還付を手続きする。固定資産評価証明書は、登記の際の登録免許税を計算するのに使う。抹消登記のように定額料金ではないのだ。

遺産分割協議書のテンプレートを掲載しておく。実際に司法書士が作成したものを、私が見やすく整えたものだ。赤字部分は修正・確認していただきたい。

なお、遺産分割協議書は相続人間の取り決めなので、ここで子2人が相続しないと書いても、第三者に有効な相続放棄にはならない。親の負債を相続したくない場合は、相続を知ってから3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の申述をする必要がある。

(2011年11月14日追記)

後日、祖父の土地が未相続のまま残っていることがわかった。遺産分割協議書により、父の相続分は母が全部相続すると思ったが、やはり第三者には無効とのこと。この顛末を記した。