住宅ローンの2番抵当になっていたメガバンクを繰上返済したので、抵当権抹消登記を自分でやった。登記の中で最も簡単と言われているとおり、司法書士に頼むのはもったいないと感じた。社会人で手続きをこなせる人なら普通に出来ると思うので、ポイントをまとめておく。費用はミニマムで2,000円+交通費だ。
(私の場合)
- マンション(区分所有建物)の所有権。
- 1番抵当は住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)で継続中。
- 2番抵当はメガバンク系列の信用保証会社。ローン期間中、移転や名称変更はなかった。
自力で抹消登記をした人の体験談はネット上でも多いが、私が感じたのは次の点だ。
- 用語(例えば登記簿謄本、登記事項証明書、全部事項証明書は正確には異なるが同じ趣旨で使われている)や金融機関が発行する書類の名称がまちまちで、わかりにくい。
- その書類が持つ意味が説明不足のため、必要性がよくわからない。
- 全国の法務局は2008年7月14日までに段階的にオンライン化され、書式や書類が変わったが、ネット上では混在している。B4縦書きはオンライン以前なので、参考にしないほうがよい。
- 登記関係の書類は書式が決まっているだけで、専用用紙はない。登記申請書は自分で作成する必要があるが、内容が合っていれば受理されるので、この点をもっと強調したほうがいい。
- 2010年度までは収入印紙と登記印紙の2種類があり、登記申請が収入印紙、登記事項証明書の手数料が登記印紙だったが、11年度から登記特別会計が廃止されて一般会計と同じになり、収入印紙に一本化された。
これらを踏まえてわかりやすく書くと、必要な添付書類は金融機関が一式送ってくれるはずなので、過不足を心配する必要はない。ネット上の体験談と名称が違ったり、足りないように思える場合も、よく見れば合っているはずだ。1通の書類に押印して2通の役割を兼ねたり、省略可能だから送ってこないのだ。金融機関はローンのプロなのだから、間違えるはずがない。通常は次の4種類だ。
- 登記識別情報または登記済証
抵当権の登記証のことで、家の権利証ではない。オンライン以後のローンなら登記識別情報通知書、以前なら登記済証(「登記済」の捺印がある抵当権設定契約証書)。登記された抵当権を抹消するのだから、その証書は必要である。私の場合は登記済証だったが、登記識別情報の場合も抵当権設定契約証書は持参したほうがよいようだ。
- 登記原因証明情報
抵当権抹消の証明となる情報。抵当権解除証書などが該当するが、抵当権設定契約証書に解除のゴム印と捺印をしただけの場合もある。
- 代理権限証明情報
金融機関からの委任状。抹消登記は権利者(借主)と義務者(金融機関)が共同ですべきものなので、義務者の委任状が必要。
- 資格証明情報
金融機関の代表者の資格を証明する情報。代表者事項証明書など。ローン期間中に金融機関が移転したり、名称変更した場合は、それを証明する履歴事項一部証明書なども必要。なお、金融機関の本店が同じ法務局管内の場合は省略可。
これらを添付書類として登記申請書を作成すればいいが、金融機関が書類の返却を求める場合がある。発行費用がかかる資格証明情報を他の顧客に再利用するのだ。この場合はその旨が明記され、返信用封筒が同封されているはずだ。添付書類を法務局から返却してもらうには、登記申請時に原本還付という手続きが必要になる。コピーを添えて提出し、登記終了後に原本を返却してもらう。
登記申請書は普通のA4コピー用紙にWordで印刷すればいい。B4縦書き時代は難しい漢数字(大字)だったが、これがアラビア数字になり、ずいぶん簡単になった。作成のポイントは次のとおり。
- 内容は最新の全部事項証明書に従う。家の購入後なにも変わっていなければ、購入時の全部事項証明書で問題ない。
- 住居表示(住所)と地番が異なるのはわかっていると思うが、地番も土地の表示に使う場合は「番」、建物の表示に使う場合は「番地」になる。土地、建物、家屋番号の表記で「番」「番地」が統一されていないので、全部事項証明書をよく見ること。
- 法務局側が受付番号票のシールを貼るため、上部に余白を設ける。5cmあれば充分。
- 登記はすべて全角文字なので、半角文字を使わないこと。登記簿謄本(全部事項証明書)は半角を使っているので使えそうに思うが、登記申請書はすべて全角。小数点や位取りのカンマも全角にすること。平方メートルは記号(機種依存文字)の「m2」を使用してよい。見栄えのため、文字幅を調整するのはOK。
- フォントの大きさは項目によって変えてよいが、種類は統一したほうがよい。
- 見やすくするため、インデントやタブは自由に使ってよいが、不必要な改行は避ける。法務省サイトの記載例と全く同じにする必要はない。
- 収入印紙を貼る紙もA4コピー用紙の白紙でよいが、自分で台紙を作成してもよい。印紙を消印するのは登記官と定められているので、自分で割印しないこと。
参考までに、私が作成したテンプレートを掲載しておく。登記申請書(2ページ)と登記印紙を貼るための台紙だ。赤字部分は修正・確認していただきたい。
登記申請書が出来たら、法務局ホームページで管轄の法務局を調べて申請へ。まずは不動産登記の相談窓口で内容を見てもらう。捺印(認印でよい)や収入印紙を買うのはそれからでいい。原本還付が必要な書類がある場合は、このとき言えば手続きを教えてくれる。
申請時と登記完了時の最低2回は法務局へ足を運ぶ必要があるが、これはやむを得ないだろう。無事に抹消登記が完了すれば、登記完了証を権利者と義務者用に2通くれるが、金融機関に渡す必要は特にない。
マンションは土地と建物が分離出来ないため、抵当権については建物全部事項証明書に書かれている。土地については所有権敷地権というものが設定され、抵当権の欄(乙区)自体がない。このため、登記完了後に最新の全部事項証明書を取って確認したい場合は、建物全部事項証明書だけでよい。土地全部事項証明書はなにも変わっていない。1通700円(10年度まで1通1,000円)なので、土地・建物両方取ると1,400円かかる。
(2014年3月6日追記)
1番抵当だった住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)の抹消登記を行なった。