住宅ローンのうち、2番抵当だった銀行ローンは完済・抹消登記済みだったが、このほど1番抵当だった住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)も完済・抹消登記を行なった。
銀行ローンの抹消登記については、「抵当権抹消登記を自分でやる場合のポイントとマンションの登記申請書テンプレート」にまとめているので、そちらをご覧いただきたい。今回はその後の変更点と、住宅金融支援機構の抹消登記で注意すべき点をまとめておく。税務署と同じで、法務局も場所や職員によって対応に違いがあるようなので、その点も留意いただきたい。
最大のポイントは、住宅金融公庫(以後、公庫)から住宅金融支援機構(以後、機構)への移転登記が済んでいるかだ。公庫は2007年に解散し、機構に一切の権利が承継されている。このため、抵当権も公庫から機構へ移転登記されなければならないが、数が膨大なため順次進められている。東京は手続きが早いだろうと思っていたら、私の場合は12年6月に移転登記されていた。意外に遅い。この調子ではまだ公庫名義の物件が多数残っているのではないか。
移転登記が済んでいるかは、完済時に機構の受託金融機関から渡される書類でわかる。
(移転登記済みの場合)
(移転登記の)登記識別情報通知、登記完了証
※法務局のオンライン化に間に合わなかった場合は登記済証の場合あり
(移転登記がまだの場合)
(移転登記の)抵当権移転登記委任状
事前に調べるには、法務局に全部事項証明書を取りに行かなくても、民事法務協会が運営している「登記情報提供サービス」を使えば、ネットで全部事項の内容をPDFで閲覧・ダウンロード出来る(法的証明力なし)。その場で使える一時利用があり、クレジットカード決済で全部事項は1件337円だ。
移転登記が済んでいれば抹消登記するだけだが、まだの場合は先に移転登記する必要がある。この移転登記は国の都合なので非課税(登録免許税無料)となり、申請事務にかかる司法書士報酬は機構が負担する。こう書くと移転登記は司法書士しか出来ないように思えるが、機構サイトを見ると「抵当権移転、抹消手続きの両方の手続きをお客様が行うとき」というパターンも紹介しているので、自分でしても構わないようだ(司法書士報酬はもらえないが)。
私がもらった移転登記の登記完了証から、参考になる記載事項を引用しておく。移転登記を自分でやる場合、これが登記申請書の内容になるはずだ。
登記の目的 抵当権移転(順位番号後記のとおり) 原因 平成19年4月1日独立行政法人住宅金融支援機構法 附則第3条第1項により承継 その他事項 (被承継者 住宅金融公庫) 権利承継者 東京都文京区後楽一丁目4番10号 独立行政法人住宅金融支援機構 理事長 ×××× 登録免許税 金0円 租税特別措置法第84条の3第1項により非課税
私の場合は移転登記が済んでいるので、抹消登記だけをすればよい。登記申請書・登録免許税印紙貼用台紙は、「抵当権抹消登記を自分でやる場合のポイントとマンションの登記申請書テンプレート」のものを再利用した。
「登記の原因」だが、今回は抵当権解除証書にはっきり「弁済」と書いてあったので、そのようにした。「解除」は信用保証会社を立てている場合らしい。義務者の名前は、銀行ローンでは信用保証会社の代表取締役だったが、機構は代理人を立てている。委任状もこの代理人名義で発行されている。このため、申請書の義務者も代理人を記載した。
迷ったのが、添付書類の「登記済証」の記載。
公庫の登記済証に該当するものは、公庫と交わした金銭消費貸借抵当権設定契約証書で、「登記済」の捺印がある。しかし、公庫から機構に抵当権が承継されているので、ここで必要なのは移転登記が済んだことを証明する登記識別情報通知ではないか。
ネットで検索すると両方必要と書かれたブログが複数あったので、申請書に「登記識別情報通知」を追記して法務局の不動産登記相談窓口で見てもらったところ、登記識別情報通知だけでよいと言われた。公庫の登記済証は必要なかった。しかも登記識別情報通知は原本ではなく、目隠しシールをはがしたコピーでよいと言う。原本を提出しても構わないが、登記識別情報通知は原本還付されずシュレッダーにかけられるので、念のため原本は申請者が保管したほうがいいとアドバイスされた。親切なことに、その場でコピーも取ってくれた。
抵当権の順位番号もわからない。公庫から機構に移転登記したので、順位番号が変わっているかも知れないと考えたのだ。
順位番号 | 登記の目的 | 権利者 |
1 | 抵当権設定 | 住宅金融公庫 |
2 | 抵当権設定 | ××××信用保証株式会社 |
順位番号 | 登記の目的 | 権利者 |
1 | 抵当権設定 | 住宅金融公庫 |
2 | 抵当権設定 | ××××信用保証株式会社 |
3 | 2番抵当権抹消 |
順位番号 | 登記の目的 | 権利者 |
1 | 抵当権設定 | 住宅金融公庫 |
2 | 抵当権設定 | ××××信用保証株式会社 |
3 | 2番抵当権抹消 | |
4 | 1番抵当権移転 | 住宅金融支援機構 |
この場合、「1番抵当権抹消」で正しいのか。受付年月日・受付番号で記載する方法もあるが、公庫・機構どちらの登記で書いたらよいかが不明なので、順位番号で書くしかなかった。登記情報提供サービスで調べることも出来たが、そのまま相談窓口で確認したところ、抵当権移転の場合は下記のように「付記×号」になるという。移転しても1番抵当権は1番抵当権のままだった。
順位番号 | 登記の目的 | 権利者 |
1
付記1号 |
抵当権設定 | 住宅金融公庫 |
1番抵当権移転 | 住宅金融支援機構 | |
2 | 抵当権設定 | ××××信用保証株式会社 |
3 | 2番抵当権抹消 |
相談窓口では、上記の修正やアドバイスに加え、下記の作業も手伝ってくれた。
- 登記申請書・登録免許税印紙貼用台紙への割印
製本していない用紙が3ページある場合、1ページ裏面~2ページ表面、2ページ裏面~3ページ表面にかけて割印が必要。前の紙を斜めに折り、前の紙の裏面と次の表面にかけて捺印する。 - 登記申請書への捨印
各ページに捨印をする。 - 資格証明情報(機構の現在事項一部証明書)コピーへの文言・住所氏名記載
受託金融機関から原本還付請求されている場合、原本以外にコピーを添付するが、これに「原本に相違ありません」というゴム印を押してくれるので、申請年月日・住所・日付を記載し、申請書と同じ捺印をする。
相談窓口は1人で対応している法務局が多いと思う。相談時間は15分以内となっていたが、時間を超えて話し込む相談者も多く、余裕を見て訪れたほうがいいだろう。
以上で申請書の疑問点はクリアし、提出後は補正の連絡もなく、問題なく登記完了した。抹消登記の場合は登記識別情報通知は発行されず、登記完了証のみ2通発行される。1通は原本還付の書類(機構の現在事項一部証明書)と共に受託金融機関に送るためのものだが、私の場合は特に指示されず、返信用封用もくれなかったので放置している。
(提出書類のまとめ)
- 登記申請書・登録免許税印紙貼用台紙(申請書に捺印、各ページ裏面~表面にかけて割印、各ページに捨印あり、収入印紙2,000円貼付)
- 代理権限証明情報(抵当権抹消登記委任状)
- 資格証明情報(機構の現在事項一部証明書コピー、「原本に相違ありません」のゴム印に年月日・住所・日付を記載し、申請書と同じ印を捺印)
- 登記識別情報(目隠しシールをはがしたコピーを封筒に入れたもの)
以上をゼムクリップ止め
- 原本還付書類(機構の現在事項一部証明書)
これを一緒に提出
ネット上では登記申請書の上部5cmに余白を設けるよう書かれているが、これは法務局が長方形のシールを貼るためのスペースだ。私の場合は下部の余白に貼っていた。上部の余白は捨印のために空けているようで、シールは下部に貼っても構わないようだ。
法務局ロビーには、タッチパネル式の証明書発行請求機が設置されていた。収入印紙を窓口で購入するのは同じだが、機械で申請すると交付が早い。私の場合、入力終了直後に名前を呼ばれ、収入印紙を購入する暇がなかったほどだ。全部事項証明書も以前はA4横だったが、A4縦に変わってページ数が減っていた。料金も13年度から1通600円に値下げされていた。
抹消登記を2回やってみたが、〈お作法〉がわからないだけで内容自体は簡易だ。わからなければ法務局の不動産登記相談窓口で訊けばいい。時間さえあれば司法書士に依頼せず、自分でやるべきだと思う。企業で契約書を扱う人なら絶対に出来る。こんなことで司法書士報酬を払うのはもったいない。
(2015年6月15日追記)
通帳記帳をしたところ、完済の数日後に機構から「ヘンカンユウソウリヨウ」として80円が振り込まれていた。現在事項一部証明書を返送するための郵送料と思われるが、黙って80円振り込むより、料金受取人払の返信用封筒を渡してくれるほうがよっぽどいい。