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岩手県立美術館で開催中の企画展「ますむらひろし展 ―アタゴオルと北斎と賢治と―」に行ってきた。1月13日の関連イベント「作家と巡る宮沢賢治ゆかりの地バスツアー『ますむらさんとイーハトーブ波を受信しよう!』に当選したのだ。前日に行なわれたアーティスト対談、サイン会と併せて楽しんできた。
「ますむらひろし展 ―アタゴオルと北斎と賢治と―」
(2019年1月3日~2月17日、岩手県立美術館)
バスツアーは定員15名に対し101名の応募があったそうで、当選出来たのは幸運だった。参加出来なかった方のために、少しでも雰囲気を共有したい。
昨日は、作家と巡る宮沢賢治ゆかりの地バスツアー「ますむらさんとイーハトーブ波を受信しよう!」を開催いたしました。
101名の応募の中から当選された15名の方々と、牧野立雄さん、ますむらひろしさんの素敵なガイドで、濃い時間を過ごすことができました。知られざるエピソードが満載でした! pic.twitter.com/h0KF1R8e58— 岩手県立美術館 (@IMA_info) 2019年1月14日
私がこの企画を知ったのは、「ますむらひろしアタゴオル+北斎《下書き》展」(2018年11月15日~25日、東京・ギャラリー猫町)に置かれていたチラシ。宮沢賢治の地元・岩手県立美術館での開催ということで、過去最大規模になることは予感したが、作家本人と半日ツアーという内容に目を見張り、参加費2,000円(昼食代、本展観覧料込)に驚愕した。これだけで完全に元が取れるではないか。3連休で都合もつけやすい。全国から応募が殺到すると思い、ダメ元で申し込んだが、『マンガ少年』創刊号(朝日ソノラマ、1976年)からの愛読者へのごほうびだろうか、当選ハガキをいただいたのだった。
このバスツアーに関しては、特筆すべきことが2点ある。
- 企画自体が非常にユニーク
作家によるギャラリートークや講座はめずらしくないが、このバスツアーはいわゆる「聖地巡礼」だ。土地が持つ記憶を作家と共にたどり、それを鑑賞者に受け継ぐ営みとしては、アニメーション監督の片渕須直氏が『マイマイ新子と千年の魔法』『この世界の片隅に』でファンと「探検隊」を実施されているが、美術館ではあまり聞いたことがない。ワークショップの可能性を広げる試みとして、全国美術館会議などで事例発表したらいいんじゃないかと思う。
- 奇跡的な好天
今年は暖冬で、この時期に積雪がないのは地元の方もあまり記憶にないという。吹雪の成人式が当たり前で、当選ハガキにも「悪天候の場合、行先が変更となる場合がございます」とあった。荒天なら最小限の場所を車窓から見るだけで、行程も短縮されていただろう。それが快晴・無風の状態で、バスから降りて散策が出来たほか、岩手山麓の湿原・春子谷地まで行けた。積雪が少ないことでバスも速度が出せ、追加のスポットに寄ることも出来た。本当に天気が味方をしてくれた。
企画展自体も「ますむらひろし展」として過去最大級で、目録の通し番号が306点、個別に点数を数えると500点以上になる。展示内容も5パートに分かれている。
- 第1章 アタゴオル前夜
- 第2章 アタゴオルの世界
- 第3章 アタゴオル×北斎
- 第4章 宮沢賢治の童話とともに
- 第5章 広がるますむらひろしの世界
作家の全領域をカバーし、広大な会場で前後期に分けず一挙展示しており、これだけで足を運ぶ価値がある。宮沢賢治への関心が高い盛岡での開催に加え、テレビ岩手が共同主催に入り、私の知る限り過去最高の人出だ。グッズも次々に売り切れ、サイン会では2019年カレンダーが品切れだった。グッズを管理する有限会社風呂猫は、ありったけの在庫を盛岡に送るべきだと思う。
物販グッズの新作はないが、岩手県立図書館と「てくてくスタンプラリー」を実施しており、両館の4か所でスタンプを集めると、缶バッジ4種類から1種類をもらえる。これまで缶バッジになっていないものばかり。美術館から図書館は徒歩20分ぐらいで、図書館は20時まで開いており(美術館は18時まで)、これはもらっておきたい。なお、図書館では2月1日~10日にミニ企画展「ますむらひろしが描く世界」を開催する。
「ますむらひろしが描く世界」
(2019年2月1日~2月10日、岩手県立図書館)
では、1月13日の行程順にバスツアーを紹介したい。
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